2019年〇月〇日の築地本願寺の夜の法座において、安方哲爾先生が常行大悲の益と生きる目的の関係についてお話くださいました。

以下、その概要です(取意)。


浄土真宗には二つの御利益がある。

一つ目はこの命終えて仏になるという利益であり(当来の益)、二つ目はこの現世で受ける利益である。

その現世で受ける利益の一つに「常行大悲の益」(常に大悲を行ずる利益)というものがある。

この「常行大悲」とは何か。

それは、私がお寺に参りお念仏をすることがそのまま、他の人にお念仏を勧めるとうことである。

思い返せば私たちも、阿弥陀さまのお慈悲を大事にして来られた先達方の後ろ姿に育てられたのである。

ところで、今の日本には「生きる意味を見いだせない」方々が沢山いらっしゃる。

この「生きる意味」に関連する事柄として、養老孟司氏は著書『バカの壁』の中でアウシュビッツの強制収容所に収容されたV・E・フランクルの主張に触れている。

V・E・フランクルは極限の環境の中で(強制収容所)、生きる意味とは「他人が人生の意味を考えるお手伝いをすることである」という結論に達した。

たとえ、末期癌の患者であったとしても、その癌に対しての振る舞い方(生き方)が、周りの方々に影響を与えることがそのまま、その癌患者の生きる意味であるということである。

振り返って考えると、V・E・フランクルと親鸞聖人が仰る「常行大悲の益」は同じ様な内容を言っているのではないか。

お寺に参りお念仏を大切にする私の姿がそのまま、いまだご縁のない方にお念仏を勧めることになる。

たとえ、寝たきりになろうとも、どの様な者も救うという阿弥陀如来のお慈悲をいただく姿がそのままお念仏を勧めることになる。

そこに自ずと生きる意味が与えられているのではないか(以上)。


以下、安方哲爾先生がご紹介してくださった『バカの壁』養老孟司著の該当箇所を引用しておきます。

おそらく、社会全体が一つの目標なり価値観を持っていたときには、どのような共同体、または家族が理想であるか、ということについての答えがあった。それゆえに、大きな共同体が成立していた。とすると、どういう共同体が理想か、という問題を考える場合、実はその問い自体に大した意味はないのではないか。(中略)かつては「誰もが食うに困らない」というのが理想の一つの方向でした。(中略)「人間ならわかるだろ」という常識と同様、人間にとって共通の何らかの方向性は存在しているのではないでしょうか。私は、一つのヒントのとなるのは「人生には意味がある」という考え方だと思っています。アウシュビッツの強制収容所に収容されていた経験を持つV・E・フランクルという心理学者がいます。彼は収容所での体験を書いた『夜と霧』(みすず書房)や、『意味への意志』『<生きる意味>を求めて』(春秋社)など、多数の著作を残している。そうした著書や講演のなかで、彼は、一貫して「人生の意味」について論じていました。そして、「意味は外部にある」と言っている。「自己実現」などといいますが、自分が何かを実現する場は外部にしか存在しない。より噛み砕いていえば、人生の意味は自分だけで完結するものではなく、常に周囲の人、社会との関係から生まれる、ということです。(中略)フランクルが70年代にウィーンの大学で教鞭を執っていた際、アメリカからの留学生の60%が「人生は無意味だ」と考えていたそうです。これに対して、オーストラリア人、ドイツ人、スイス人で「無意味だ」と考えていたのは25%だった。特にアメリカ型の思考を持つ人にこういう考え方が多いことがわかった。フランクルは、強制収容所といういつ殺されるかわからない状況下で、「生きるとはどういうことか」という意味について考えてきた。そして彼の人生の意味は「他人が人生の意味を考える手伝いをする」ことでした。ガンの末期で寝たきりになった患者にとっての生きる意味を彼は問います。医者によっては、そういう人にはもはや生きる意味は無い、と判断するかもしれません。しかし、フランクルはこう考えました。「その人が運命を知ったうえで取る態度によって、周囲の他人が力づけられる」という意味があるのだ、と。あるガン患者は、死んで子供たちと別れるのが辛いことを訴えました。これに対してフランクルは、あなたに身内がいなければ嘆くことも出来ない。少なくともこの世に置いていきたくないものを残しているではないか、それがまったく無い人もある、という風に答えます。

『バカの壁』P108

また、次回以降の記事で『バカの壁』で紹介されている V・E・フランクル著『夜と霧』、『意味への意思』の内容を紹介します。

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